わが国では原子力発電所が大量の放射性物質を放出するような大事故は起こらないと云われていますが、万一このような大事故が起こったと仮定したときの事故の被害はどの程度であるか知りたい。

【解答】 
 わが国の原子力発電所においては大量の放射性物質が放出されるような大事故は、起こらないと言ってよいほど発生する頻度はきわめて低いものです。したがって、何世代もの世代で原子力発電所の事故を経験することはありません。
 しかしこのような大事故が発生したと仮定して、どの程度の被害を受けるか考えてみましょう。

 被害は経済的な被害と健康上の被害に分けられます。
経済的な被害は莫大なものになります。チェルノブイリ事故の例を見ると健康被害を極力低くするために色々な対策を行いました。高汚染区域は居住禁止にし、汚染除去や汚染食品の食用禁止などの対策を行いました。そして居住禁止区域の住民には、移住費用、移住後の生活保障などの諸々の費用の支出があり、その他にも汚染除去費用、汚染食品廃棄費用などの費用の支出があります。これ等を総計すると莫大な費用がかかりました。ベラルーシ国では、当初は年間国家予算の約20%が支出され、最近では約5%といわれています。
 この経済的損失は原子力発電所の電力供給による経済的利得と比較すべきものでありますが、これらを勘案して当事国の旧ソ連3カ国では原子力発電の推進を維持しております。

 健康被害については、仮にわが国で大量の放射性物質を放出するような大事故に遭遇したときの健康被害(死亡)について評価した結果は、過剰死亡確率で0.0005、寿命の損失で50日という結果となります(V.資料および論文 (1)原子力とそのリスク第4章、4.4節参照)。

 しかし、大事故は殆ど起こるとは考えられないので、大事故の発生する頻度を考慮したリスクを求めると、過剰死亡確率で0.0000002、寿命の損失で0.002日となります。これが原子力発電所の本当の健康被害であります(V.資料および論文 (1)原子力とそのリスク第4章、4.4節参照)。

 この健康被害はどの程度の大きさなのでしょう。日常生活のリスクと比較したものを表に纏めました。

種々のリスク
リスク事象 過剰死亡確率 寿命の損失
貧困 ―― 9,000
不慮の事故および天災 0.023 340
自動車事故 0.009 130
1988年のインフルエンザ程度の流行病 ―― 120
原発の大事故に遭遇
(発電所周辺の住民に対して)
0.005 50日
兵庫県南部地震相当の地震
(
被災住民に対して)
0.002 31
原発の大事故
(発電所周辺の住民に対して)
0.0000002 0.002

 過剰死亡確率とは、日本人の平均寿命の男女平均を80歳とし、日本人が80年間に災害によって死亡する確率であります。例えば、過剰死亡確率0.005とは生涯の間(80年間)に事故で死亡する人は10万人当たり500人であることを示します。
 寿命の損失とは、
80歳の平均寿命に対して、災害により何日の寿命の損失があるかを示したものです。
  「貧困」と「1988年のインフルエンザ程度の流行病」の2事象については、用いたデーターべースが寿命の損失で与えられていたので、過剰死亡確率では示していません。

 以上の話は皆さんが始めて聞くことかもしれませんが、これは客観的事実であります。「V.資料および論文の(1)原子力とそのリスク 第4章の4.4節および4.6節に詳しく述べられています。)