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3. 軽水炉による原子力発電のスタート

 昭和30(1955)代に入ると米国は、それまでの政府と民間による技術開発の成果として商業用プラント向けにガス炉に比べてコンパクトでかつ出力のスケールメリットを追求した大型の軽水炉を、GE社は沸騰水炉((BWR)WH社は加圧水炉(PWR)として市場に参入してきた。PWRの商用炉1号機はシッピングポート1号(10万キロワット、1957.12運転開始、ペンシルバニア州)、BWRのそれはドレスデン1号(20万キロワット、1960.6運転開始、イリノイ州)である。

 米国での初期の軽水炉プラントの経済性の実績などを見て、わが国の電気事業者は、英国型炉の建設中の不具合などの経験からして軽水炉の導入に傾いていった。日本原子力発電会社による敦賀1号機(BWR357000キロワット、1970.3運転開始)の先駆的な導入に続き、関西電力美浜1号機(PWR34万キロワット、1970.11運転開始)、東京電力福島第一1号機(BWR46万キロワット、1971.3運転開始)が導入され、原子力発電の本格的な商業利用の時代に入った。

 電気事業者が高度経済成長期の電力需要の急増に対応するには、プラントの単機出力の増大にともなうスケールメリットに限界があったガス炉に代えて軽水炉が選択された、といえる。燃料を含む運転費に比べて設備など資本費の大きい原子力発電はスケールメリットを追及せざるを得ず、初期の3040万から急速に100万、130万キロワットへとスケールアップしていった。急増する電力需要に対して、燃料のウランの調達にもあまりわずらわされずに容易に出力アップできる濃縮ウランを使った軽水炉は最適な選択だった、ともいえよう。この点で天然ウランのガス炉は、スケールアップすればそれだけ発電設備も巨大になり、ウラン燃料の量も多くなる。まして化石燃料の火力発電ではスケールアップにともない燃料消費量は膨大になってしまう。

 PWRBWRとでは、同じ軽水炉であるため、技術面、経済面で本質的な違いはなく、その選択については、原子力導入に先行した火力発電プラントなど電力用機器の発受注を通じて培われたそれぞれの電気事業者とプラントメーカーとの歴史的な信頼関係が、PWRBWRか電気事業者の選択に少なからず影響していると考えられる。

 200412月末現在、世界の原子力発電プラントは434基、37920万キロワットで、その3分の2以上がPWRと、わが国ではBWRの方が多いが世界的にはPWRが主流になっている。その理由を推測すれば次のようにいえるだろう。原子炉は最初原子力潜水艦の動力に使われたが、それは、船の揺れを考慮して加圧して自由水面を無くしかつコンパクト化できる加圧水炉が採用された、その炉を陸上において発電用に使ったのがPWR型発電炉。それに対してBWRは最初から陸上設置の設計なので自由水面が許容され、無理にコンパクト化せずにPWRに比べて2分の1位の低い圧力の大量の水の中に原子炉をゆったりと置いたもの。それぞれに長所短所があるが本質的な違いは無い。技術的な面について1点触れるならば、原子炉から蒸気タービンに送られる主蒸気中の放射能を抑えるため、PWRは原子炉水(一次系)と主蒸気(二次系)を大型の蒸気発生器で分離しているためこの熱交換器の細管からの漏洩防止に万全を尽くし、BWRでは原子炉水が直接タービンに送られるので炉心の燃料の破損防止に万全をつくしている。PWRBWRの普及度の違いは、あえて言うなら前述のような電力会社の好みや信頼関係、あるいはPWRのメーカーWH社とBWRメーカーGE社の営業力の違いと言える。


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