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7. 低迷を克服して新たな飛躍を目指すわが国の原子力発電

 わが国の原子力発電は先述のように、紆余曲折を経ながら半世紀経って軽水炉技術において一応の成熟に達した。しかし20世紀末になって残念ながら以下のような状況になってしまった。

@       成熟の過程で技術を囲い込んだ官民の閉鎖的な原子力界に生じた内部矛盾・制度疲労とその顕在化

A       この半世紀間に社会の仕組み・意識などが大きく変化したにもかかわらず、うちうちの専門家の閉鎖社会に閉じこもったがゆえに近年のこうした変化に鈍感で、対応を誤ったがゆえに生じた「社会と原子力」の不整合

B       本来公益的な技術であり産業である原子力について、電力自由化に直面した電気事業者が短期的視野に陥りがちで、半世紀前に行われた電気事業再編成で激しく論議されたような私企業としての公益を担う精神の希薄化

 こうしたことから、原子力と社会が次第に乖離し、原子力界は残念ながら世紀末に至って社会からの「技術に対する不安感」と「技術者・関係者に対する不信感」に直面することになってしまった。

 しかし物事は弁証法に言うように、発展の中に矛盾の芽が生まれ、これが克服されるなかに新たな発展の機会が生まれる、という。その意味で今の低迷は次の発展に向けての「創造的破壊」の段階にある、と考えられる。そして原子力技術・産業の発展の条件は、今、世界的にもその条件が整いつつある。

特記すべきは、20058月、米国はブッシュ政権下で「包括エネルギー法」が成立し、ここには“原子力ルネッサンス”に向けて軽水炉発電プラントの運転期間延長、出力増強、プラントの新増設などに向けた國の制度的な支援策、さらにカーター政権時代に封印された商業用再処理・プルトニウム利用についても技術開発に取り組む方向が言及されていることである。

こうした原子力の再活性化の「チャンスの前髪」をわが国の原子力界がつかめるか、つかむだけの気概があるか、であり、これに向けて民間原子力産業団体も大きな改革を進めており、これは原子力産業界全体の改革、そして原子力産業の基盤強化と再活性化につながっていくものと考えている。

 

 わが国の原子力発電は、ここ当面は安全を第一に既存の多くの発電設備の稼働率を向上させ、さらに高経年プラントのより有効かつ効率的な長期的活用を図る必要がある。このために運転・保守技術の技術的・制度的な高度化を達成し、これによって社会の信頼を回復し、社会の支持を得なければならない。

 

 50年前の世界人口は25億、現在は63億、そして50年後は90億といわれる。予想される資源制約・環境制約の克服をめぐる国際的・社会的な緊張を少しでも緩和し、世界の平和と地球上の生きとし生けるものの生命の持続性を維持するには、基本的に原子力技術・原子力エネルギーの賢明な活用無しには他に有力な手段はありえない。

 先述のようにわが国は、国内需要に向けて原子力開発を進めてきたと同時に、プラントメーカーなど原子力産業を育成してきた。上記のような地球規模・世界規模での原子力発電、発電のみならず淡水製造や水素製造の必要に応じるだけの実力はわが国にある。

 平和利用一筋で進めてきたわが国が、今、その技術や技術管理システム、人材の育成、発電プラントなどの国際的な展開を積極的に図ることは、わが国の国際貢献であり、国際的な責務と考えられるのである。

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